チャンディダサの最後の朝食を、あのマズイコンチネンタルで済ますのは嫌だ、と話がまとまったので、気に入ったTJ'Sカフェへ出張した。まだ準備もすんでいないと言うのに、あのきさくなウェイトレスの女の子が、中へ入れてくれる。まだ夕べのゴミが残っているので、待っている間に急いで片づけていた。
ここで食べたアメリカンのブレックファストは、我々の期待以上だった。両面焼きのフライド・エッグの香ばしいこと。パンもしっとりと甘くて、足を運んだ事にすっかり満足。
※朝食※アメリカン・ブレックファスト RP5,500-
さて今日は昨日のあんちゃんたちと一緒に、お祭を見に行く訳だが、カフェでついつい長居をして、待ち合わせの時間に遅れてしまった。プールサイドで人待ち顔のバリニーズ。
ほほほ、ジャムカレットよ。(時はゴムのように伸びる、と言う意味)
浜にはカヌーのようなジュクン、と言うバリの船が止まっていて、それに乗り込む。帆も張るけれどエンジンもちゃんとついていて、結構スピードが出る。あっと言う間に沖へ出ると、ホテルから見える小島の方角へと走りだした。
綺麗に並んでいると見えた小島は、近くへ寄ってみると互いに近いどころか、てんでばらばらな場所にあることが判明。それが遠近法の悪戯で、一つの場所にまとまって見えているだけなのだ。ここはシュノーケリング・ポイントらしく、珊瑚や魚がふんだんにいる。
海に向かって突き出した岬を回って、目的地へとジュクンは進む。岸壁の上には一面にサボテンが生えていて、すごいことになっている。その周辺には子供が遊んでいて、私たちを見ると手を振ってくれた。この辺りはけっこう深いらしくて、海はスレイトブルーに見える。だがそれでも、かすかに底が見えるのだから、どれだけ水が透明かよくわかる。
ちょっとした浜や岬を通って、三十分ほどは何もない移動が続く。退屈なので歌でも唄おう、とすずはらと交互に海の歌を唄ったが、わりとくだらない懐メロしか思い出せなくてなさけない。もっとこう、ユーミンとかサザンとか歌えたらカッコイイのに、椰子の実の歌とか、海のトリトンとか、我は海の子とか、そんなんばっか。
いつのまにか周囲に船が増えていた。家族を乗せた船あり、やっぱり私たちみたいな観光客を乗せてやってくる船ありで、にぎやかになってきた。見れば岬を回り込んだ所に、たくさんの船が止めてある浜が見えた。この辺りには珍しく砂の色が白い。
浜の中央には渚に向かって突き出す岩があり、それに向かって大勢の人が拝参している。ごつごつした岩の上に花が飾られて、黒いだけの岩が七色に変わっている。砂浜に不意に突き出したように見える岩は、確かに少し変わった印象を感じる。これが御神体、とでもいうものなのかもしれない。
波打ち際に上陸して、浜に上がると混雑はますます増して行く。浜から上った場所にお社があるらしく、そこを中心に人が集まっている。私たちは中まで入れないので、外側からお祭を見物。うず高い供え物がいったりきたり、祈る人が入れかわり立ちかわり、どうなっているのかわからない。冷たい物屋やサテ屋が、その隙間に店を開いていて、時々煙が流れてくる。
船頭をしていた彼は、いつのまにか正装に着替えていて、頭にきちんと布をまいた格好で、お社にお参りに行ったので、帰ってくるまでしばし浜で待つ。どうやらここは漁村らしくて、浜の向こう側にあるジャングルの中には、いくつかの建物が見えた。日陰になっている小屋の所で涼んでいると、日本語で話しかけられる。
「チョットダケダヨ」
こんな僻地の村にも、日本語話せる人がいるんだなぁ、でも私もインドネシア語を習っているんだ。と、お互いに言い合う。
ぎらぎらした太陽の下で、ぼんやりと待っていると船頭の彼が戻ってきた。そろそろホテルへ戻ろう。来た時と逆の道順をたどって、船はゆるゆると逆進する。これからあの村へ行く船もあり、だんだん沖天へと昇る太陽は、水底をはっきりと見せ始めていた。
「すごいきれーい」
いったいどれぐらい水深があるのかわからないが、すぐにでも手が届きそうに見える場所に、様々な色の珊瑚が花開いている。熱帯魚がひらひらと泳ぎ、テレビで見せられる、南の海そのもの。
ああ、こりゃもうシュノーケリングするしかない。海が呼んでいるよー。
セレモニーとシュノーケリングのセットで RP50,000…うーん、ちょっとぼられたかなぁ。でもとりあえずシュノーケリングの機材レンタルも入っているし、まぁ無難な値段かな。
いったんホテルの部屋に戻って準備した後、沖へと向かう。お祭に連れて行ってくれた彼は、ここで兄に交代して船も変わった。役割が分担されているのか?何でも五人も兄弟がいるそうだ。
さっき沖に見ていた岩の間まで船が進んでゆくと、先客がいた。なんだか想像していたより水深が深い。
私たちはすっかり忘れていたが、今日はなんと満月で大潮なのだ!こんな日にシュノーケリングしようなんて、たょっと無謀だったかもしれない。
紐のついた黒いゴムの浮き輪につかまって、潮に流されないようにしながらシュノーケリング…と言うより、ただ水の中を見ている、と言う状態。ぼーっとしていると浮き輪ごと流されてしまう。
すずはらはシュノーケリングのマスクの調子が悪い、とぼやいている。水が入ってくるんだそうだ。どこかに亀裂が入っているのかも知れない。
そうやってじたばたじたばたと水遊びを楽しんだ後、へとへとになって船に戻る。カヌー形態のバリ船に昇るのは、すっごく大変なんだ、と以前に船遊びをした友人から聞いていたが、船頭の兄ちゃんは大した力持ちで、ちょっと人には言えない体重の私たちを、何とか船の上まで持ち上げてくれた。
シュノーケリングするならと、ホテルの部屋は半日の延長を申し込んであったので、シャワーも浴びて部屋でゆっくりと休憩する事ができた。
あったかいシャワーを浴びてさっぱりしたところで、ちょっと遅いランチを取りに、ホテルの外に出る。
ホテルの斜め前にあった「Chez Lilly」と言う店に入る。店の中はがらんとしているが、バリダンスを踊る、かなり古い白黒の写真が飾ってあったりして、ちょっと凝っている。
お香でトランス状態に陥った少女が、筋骨たくましい男の肩の上で踊る、と言う写真にすずはらはたいへん感銘を受けていたようだ。今度書き下ろす漫画のネタにしよう、と言っている。
併設のお土産屋兼アンティーク・ショップには、なかなか質も値段も良い物がそろっていた。
ここですずはらはスパゲティを頼んでみた。インドネシアのパスタは、ほとんどがゆですぎで、アルデンテなんて夢のまた夢、と聞いていたが、じつはすずはらは、ちょっとゆですぎのぐんにゃりした物が好みなのだ。
期待通りのちょっと柔らかめのパスタ…そしてこれは?「変な味ー」
「どれどれ」
一口、試させてもらったが、確かに奇妙な…味だ。チーズクリームに、上に乗せてあるのはパセリ…いや、たぶんこれはバジルに違いない。
変な味、変な味、と言いながら、結局全部食べてしまった。単に生まれて初めて出会った味だったようで、後々すずはらはこの味を思い出しては、もう一度食べたい、とこぼしていた。
私のオープンサンドはトーストの上にサラダをどっさり乗せた、と言う感じのもので、これもけっこうおいしかった。
さて、デザートはやっばりずっと待っていたTJ,Sのホームメイド・ケーキを食べに行こう。すずはらはココナツ・クリーム・パイに、私はアップル・クランブ生クリーム乗せ。どちらも最高に美味しかった。ボリュームがすごかったけどね。アップル・クランブのクリームなんか、ほとんどチーズのようなヘビィクリームで、ねっとりどっかり。ココナツパイは、ココナツ独特のしゃきしゃきした歯ざわりがあるけれど、味は最高。
隣でランチを食べていたオージーの親子三人を見ながら、すずはらが勝手にホームドラマをねつ造している。
スプライト RP1,000
シナモンティー RP2,000
オープンサンドイッチ RP3,500
パンタ ペンネ (これがチーズクリームパスタ) RP4,000
ココナツパイ RP2,250
アップルクランブ RP2,250
アイスティー RP1,000
チャンディダサビーチコテージのフロントスタッフ、小柄で可愛いアユちゃん(名字がイダ・バグースだったので、ブラフマー階級らしい)と記念写真を撮って、四時のウブドへのシャトルバスを待つ。
夕方のシャトルバスは客が少なく、私たちとオージーのおばさんの三人だけだった。途中の乗換もなく、まっすぐにウブドへ直行。途中であちこちのお祭りに遭遇するが、写真の準備をしていなくて、大騒ぎ。おばさんが親切にドライバーに車をスローダウンさせてくれ、と頼んでくれたが、無愛想なドライバーはほとんど無視していた。
猛スピードでぶっとばしていたので、まだ明るいうちにウブドに到着。さっそくロスメンの勧誘の嵐に遭遇する。しかし、とりあえず当てを決めていたので、バスに拾ってもらって近くまで乗せていってもらう。
だがそのバスは、モンキーフォレストストリートの端で、サヌールへ行きたいと言う外人夫婦の貸し切りにされ、私たちは降ろされてしまった。しかし、いきなりチャーターしてくるなよなー。
しかし予定していたコテージは、なんだかいまいち気に入らない。錆で真っ赤になった鳥小屋が玄関にあって、何だか胡乱な雰囲気。それにどういう訳か、チャンディダサで声をかけてきた、タトゥーだらけの怪しげな日本語を操る兄ちゃんが、そこに泊まっていたのだ。
重い荷物をしょって戻ってくると、体力の限界だとすずはらが荷物をかついでぼーっとしている。どうも近くにお寺があって、お祭りがあるらしいのだが、とりあえず宿を決めない事には動けない。
すずはらが荷物を持って動けるほど、もう体力が残っていないので、一人が荷物番をして、もう一人が宿を探しに行くことにする。今までは私の方が決めていたので、今度はすずはらに決めてもらうことにする。
ウブドのインフォメには、日本語の達者な男の子がいて、すずはらは彼に紹介されたコテージをバイクで身に行ってくれた。二軒見てきて、すずはらが気に入った方へ行ってみる。場所はチャンプアンへの谷の入口を、右側に昇っていった所にある、「ABANGAN COTAGE」
見せてもらった部屋は、一階にバスルームがあり、少々急な階段を昇った上がベッドルーム。屋根裏部屋みたいな三角屋根作りの天井には、大きなファンがぶら下がっている。部屋の窓からはそれぞれライス・テラスが眺められるし、渓谷も良くみえる。
ちょっと階段の下の暗闇が気になるのと、片方のベッドの上に貼ってあるおフダ(!)がやだったが、ちゃんとお湯も出るしトイレはウエスタンだし、水場は文句なしだ。予算も一応ぎりぎりの所だし、ここに決めることにした。
すずはらがコテージを紹介してくれたアグン君と、お祭りに行くのだと言って、クルンクンで買ったクバヤに着替える。さすがに東洋人なので、さっき見た白人のクバヤ姿と違い、全然違和感がない。
その姿でラーマヤナバレェの演じられる、ウブドのダンス会場へ行ったら、暗さにも紛れたのだろうが、地元の子と間違えられて、チケットも切ってくれなかった。
結局コマシ風のアグンは姿を見せず、八時からのラーマヤナバレェを予定通り鑑賞する。入ったのが遅かったので、良い席はほとんど押さえられていて、楽団の後ろの方の席になってしまった。渡されたパンフレットには、正確な日本語をワープロで打ったラーマーヤナの説明書きが。
今夜の舞台はすっごいダイジェスト。だがその分、すごくわかりやすかった。金の鹿(キジャン)のダンスがあって、とても可愛い。飛んだり跳ねたり、新作ならではの振り付けだ。しかし、途中で雨は降ってくるわ、腰はだんだん痛くなるわで、集中できなくて残念だった。
帰りにお祭りを見に行こう…と思っていたのだが、びとく眠いのと雨が段々ひどくなってくるので、あきらめてコテージに戻る事にする。私はあんまりにも眠くて、食欲すらない。すずはらはしかたなくカフェ・ワヤンでチーズケーキを買って戻る。コテージには確かお茶が残っていたし…と戻ってみると、置き去りにされた砂糖壷には、何百という蟻がたかって、恐ろしいことになっていた。そしてすずはらが「高い」とぼやきながら買ったカフェ・ワヤンのチーズケーキは、ひどくまずかった。
1992.10.14
夜中はハードレインだったが、朝には綺麗に止んだ。
朝食を運んできたボーイのマデは、夕べもお茶を持ってきたコテージの従業員だが、こいつときたら、なんか異常に人なつこい。と言うよりも、なれなれしすぎて気を許せない感じ。
朝食に出たバナナパンケーキは、まぁそこそこ。お湯の出ない高級コテージ、チャンプアンホテルを越えるほど美味しいバナナバンケーキは、まだ無いなぁ。
今日はウブドですごそう。まずおみやげを入れて帰る大きなカバン(布ボストン)を買わなくては。
ウブドの朝市は、人と物でごったがえしていた。そこをひとめぐりしてから、モンキーフォレスト通りへと抜ける。自転車を借りてみようかと思ったが、どれもが乗りにくいスポーツタイプで、私たちに乗れそうなタイプの自転車は見あたらない。私は思いきってバイクに乗ってみようか、と酔狂にも考えて、その辺のバイク屋で挑戦したみた…が、ダメだった。
よろよろー、ふらふらー、へろへろー。
通りすがりのオージーの兄ちゃんにも、「ありゃぁ無理だ」と、太鼓判を押されてしまう始末。バイク屋のおじさんは、「夕方にそこの空き地で特訓してやる」と言ってくれたが、これ以上怪我しちゃあまずいので、あきらめることにした。歩くしかないね。
「うう、悔しい。来年はきっと、ペーパードライバーを脱出して、レンタカーでドライブだ!」
「本気?」
「だって、悔しいよう」
いいなぁ…と思いつつ、実はまだ何もしていない。結局私は、車に乗るのが恐いのかもしれない。みんなよくあんなでかい乗り物を、やすやすと動かせるものだ。
買い物をしながら、恒例の猿の森へ。去年の猿に好評だったクッキーを買って行く。
しかしクッキーは腹をすかせたボス猿にあっさり強奪され、私たちはすごすごと森を出る羽目に。
裏側からプンゴセカン村の方を回って、その辺の店をひやかしながらてくてく歩く。歩く、歩く、歩く。
「疲れた」
ついにすずはらが音を上げた。
「もう少し歩くと、ベモが通る道に出るから」
「水ー、水が欲しい」
プリアタンへ曲がる道へ出ると、なんだかよくわからない店で水を買い、ベモに乗ってウブド方面へと向かった。乗ったベモはウブドをかすめて行くだけの路線ベモだったので、角の所で降りて乗り換える。
ずっと歩いてお腹がすいたので、噂のカフェロータスでランチにしたが、相変わらず店員の態度は、バリで一番の最低さかげん。ほんっとうに態度悪いんだよな、ここの店員はー、お化けも出るし。
しかし、ここのソト・アヤムは結構おいしかったはず…と思い出して注文したが、すっかり味は変わっているし、ボリュームは減っているしで、がっかり。
その後、よせばいいのにボロボロの車を借りて、クタヘ行く事にした。
後で考えても、何だかなぁ、の選択だ。どうも気持ちの調子が良くなくて、まともな判断が出来ていなかったような気がする。
クタのアートマーケットに乗り付けて、クタの町を一回りしてみる。
ところがこの場所にたどりつくまでも、運転手のおっちゃんはこっちの言う事も聞かずに、いきなりクタの浜辺に車を乗りつけるし、どうもうまくなかった。
しかし、私たちはクタの中心街を歩くのは初めてだ。
噂通りの騒々しさで、噂通りの煩雑さ。品物はどちらかというとサーファー向けで、あまり気に入りそうな物は売っていない。
「バリの海沿いって、すっごく暑いねぇ」
「何だか視界が白いよ」
ウブドと比べると、クタは本当に暑くてしんどい町だった。店の軒先にかけられている何十枚というTシャツは、もしかしたら日除けなのかもしれない。
何となくその辺の店に入り込み、値段を聞いたが…何だか聞き間違いではないかと思うぐらい、高い。何度も聞き返したが、とんでもない値段だ。ウブドの4倍、5倍、6倍…。
その間にすずはらは近所の店でちょっと良さそうなネックレスを見つけ、どうしようかと思っていたらしいが、これの言い値がRP70,000!交渉を繰り返して、RP35,000まで落としたすずはらは、お財布を出しかけてはっと気付いた。
ちょっと待て、これがそんなにするもんか。
すずはらは午前中にウブドの店で、指輪を四つも買い込んでいるのだが、それの値段が全部でRP40,000だった。いくらなんでも、こんなちゃちなネックレスが、そんなにするなんて変だ、高すぎる。土壇場ですずはらはネックレスを買うのをやめた。
結局何も買わずに、だらだらと町を歩く。噂に聞いていた物売り攻撃は無いが、この炎天下を目的もなく歩くのは非常に疲れた。暑さと疲労で頭がぼーっとしてきて、歩く事以外何も考えられなくなる。
そのうちにどこからともなく現れた物売りの子供が、先頭に立って歩いている私の回りにたかり始める。何度も要らないからと追い払っていたのだが、どんなに拒否しても拒否しても、頭の上にたかる小虫のように、いつまでも私から離れない。全部で七,八人はいただろうか、大きいのから小さいのまでが、前後左右を取り囲んで、いつまでもついてくる。
あんまりうっとおしいので、角にあるカバン屋に飛び込んで子供をやりすごした。そこのカバン屋には、そこそこの値段の皮のカバンがたくさんあって、考えていた価格とだいたい折り合いがついたので、お代を払おうとしてみると…。
「やられた!」
ポーチに入れていた二人の共通の財布と、バラで入れていたRP10,000が影も形も無くなっている。ここには確か全部でRP50,000ぐらい残っていたはずだ。
店員のおばちゃんと息子らしい男は、きょとんとしていたが、私が泥棒だとインドネシア語で言うと、なるほどそうかとわかってくれたが、それでも商売は忘れない。日本円でもドルでもいいから、とにかく代金を払ってこいつを買っていけと言う。
「でも、もうお金無いから」
と言っても聞く耳を持たない。こっちが嘘でもついているんだと言いたげだ。
カバンの値段はRP65,000だったが、今手元にあるのはへそくりの日本円が\3,000だけだ。しかし、彼らはそれでもいいと日本円を受け取り、カバンはようやく私の物になった。
それにしてもクタは恐い、用心していたつもりだが、囲まれてやられてしまった。真後ろにいたはずのすずはらも、ぼーっとしていたために、目の前で行われている事に気付きもせず、ただ見ていただけに終わってしまった。その後はもう最悪。道は間違える、変な男に後をつけられる、すずはらは私のサンダルを思いきりふんずけて壊す、泣きっ面にハチ、弱り目にたたり目とはこの事。
ほうほうのていでウブドに戻った私たちは、その夜のレゴンダンスでうさを晴らそうとしたのだが、これがまた前日ほど面白みは無く、何だかたいくつ極まりない展開で、つい居眠りなどしてしまう。
大事な楽しみであるはずの夕食も、メインロード沿いにある、二階のテラス・レストランに入ったものの、そこのソトアヤムはどこの物より最悪で、すずはらが注文したカルボナーラもぼそぼそでまずく、二人とも半分も食べきれずに店を出てきてしまった。
道の真ん中ではバリ犬が集団で喧嘩をし、私たちに向かって威嚇する。今日は本当についてない。もう本当に何だか気分がくさくさしてくる。この後、またサヌールへ戻って宿を探さなければならないのかと思うと、何もかも面倒くさい。だけどこのまま最後までウブドに居るのも何だし、欲しい物は手に入らないし…。
いっそのこともう一度ブサキまで買い物に行こうか、でもそんなにしてまで必要な物ではないし、ああ、もうなにもかもやだ。宿に戻ってからストレスが高じて、すずはらと喧嘩する。八つ当たりなんてバカみたいだと思いつつも、自分をなだめきれない。
自分がこうしよう、と思った事がうまくいかないのが嫌だ。誰も私を責めてはいないけれど、自分自身が私を責めている。そんな失敗を繰り返すと、誰かに目標を、予定を決めてもらい、文句を言いながらもついて行く事が、とても楽な事に思えてくる。
そうだ、愚痴や文句なら誰でも言える。でも、何もかも事をうまく運ばせることなんて、なかなかできないものなんだ。
誰でもいいから私に、これからどうしたらいいか教えてくれと、言いたくなるのはこんな時だろう。
しかし、そんなぐれた気分の私を、すずはらは辛抱強く慰めてくれ、おかげで何とかこれからの予定を決める事ができた。
今日の悪かった探し ●買ったばかりのイヤカフスを無くす。 ●荷物の鍵を無くす。
(後に発見されたが、新しい鍵を買った後だった)
フルーツラッシー RP2,700
アイスティー RP1,300